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TACTニュース
No.678

法人が土地に定期借地権を設定して賃貸し、借主が建物を建てる場合の法人税の取扱い

1.法人の定期借地権の設定と権利金の認定課税

(1)法人税法施行令第137条の借地権の範囲

法人税法施行令第137条は、「借地権(地上権又は土地の賃借権をいう。以下この条において同じ。)若しくは地役権の設定により土地を使用させる行為をした内国法人については、権利金を収受する取引上の慣行がある場合においても、その権利金の収受に代え、その土地の価額に照らしその使用の対価として相当の地代を収受しているときは、その土地の使用に係る取引は正常な取引条件でされたものとして、その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算するものとする。」を旨として規定しています。
一方、借地借家法上の借地権は、「建物の所有を目
的とする地上権又は土地の賃借権」と規定されています(同法第2条)。法人税法施行令第137条の借地権に比べ「建物の所有を目的とする」という限定がある分だけ範囲が狭く、同法上の借地権は、法人税法施行令第137条の借地権に含まれるといえます。
定期借地権は借地借家法第22条で定められ、同条では存続期問を50年以上とした借地権であれば、更新がないなどの一定の特約を付けることができ、その特約付の借地権の設定を定期借地権として認めるとしています。定期借地権は特約付の借地権ですから、同法第2条の借地権の一種です(同法第23条の事業用定期借地権等についても同様です)。
以上により、法人税法施行令第137条の借地権は、借地借家法上の定期借地権等も含むと解されます。

(2)法人税法施行令第137条の借地権の範囲

法人税法施行令第137条は、土地の使用に際して「権利金を収受する取引上の慣行がある場合」を大前提にしています。借地権の設定により自己の土地を使用させた場合、その地域に、使用の対価として通常権利金を収受する取引上の慣行があるときに、その慣行によらず、権利金の収受なしに借地権の設定をした場合、法人税法では、権利金相当額の収益が貸し手の法人において実現し、それを収受しないこととして借地人に寄附したものとして取扱う(法人税法22条第3項、37条第7項)ことが原則です。
しかし、権利金と地代は、いずれも土地の収益力・使用価値を土地の借り手に享受させることの対価であり、一方が高くなれば他方が低くなるというトレードオフの関係にあると考えられるので、それらをどのような形・割合で組み合わせた支払いであつても、全体として土地の使用の対価として経済的合理性を持つ限りは、正常な取引(対価関係)に当たるものと言えます。その一例として、権利金の収受に代えてそれをカバーするだけの地代を収受することで土地の貸付取引が成立することも考えられます。

そこで、法人税法施行令第137条は、「権利金の収受に代え」、つまり権利金を収受していなくとも、その「土地の価額に照らしその使用の対価として相当の地代を収受しているときは、その土地の使用に係る取引は正常な取引条件でされたもの」と認め、権利金相当額の収益実現と贈与(寄附)を同時に認定する処理は行わないと規定しています。「相当の地代」は、「権利金の収受に代え」収受すべきものとされていますので、同条は土地の使用に際して、「権利金を収受する取引上の慣行があるとき」を適用の前提にしているわけです。

2.法人が定期借地権を設定して権利金を収受せずに賃貸する場合の、法人税法上の地代水準の考え方

普通借地権の場合は、借地人に強い権利が与えられるため、土地の価額がいわゆる底地価額まで低下してしまう見返りとして、高額の権利金を徴収する必要性があると一般に考えられ、実際にその収受が慣行となっています。しかし定期借地権は、契約期間が過ぎれば土地が確実に所有者の手元に戻り、立退料も不要のため、その必要性がもともと薄いといえます。
実際、定期借地権の場合は権利金を収受する慣行は成立していません。定期借地権は、法人税法施行令第137条の借地権には含まれるものの(上記1(1)の最終段落ご参照)、同条適用の前提条件を欠いていることから、定期借地権には法人税法施行令137条は適用されず、同条の適用を前提として相当の地代の基準等を示す法人税基本通達も適用されないと考えます。
権利金の収受を行わない定期借地契約の当事者は、相当の地代に関する法人税基本通達等の規定に縛られることなく、経済合理性に基づいた相応な地代(法人税法基本通達13−1−2の「相当の地代」(同通達中の「8%」を「6%」と読み替え後)より低くてもよい。)を取り決めればよいことになります。

[ 山崎 信義 ]

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