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TACTニュース
No.676

借地権者が底地を取得後にその土地を譲渡した場合の譲渡所得の概算取得

【問】

私は、貸家の敷地として昭和45年から賃借していた土地(借地権設定の対価は不明)の底地を平成10年5月に4,000万円で取得し、その後貸家を取り壊して駐車場として使用してきました。
昨年8月にこの土地を8,000万円で譲渡しましたが、土地の取得費のうち旧借地権部分の取得費が不明なので、譲渡所得の金額の計算上控除する取得費につき、①旧底地部分は買取価額4,000万円、②旧借地権部分は概算取得費(旧借地権部分の譲渡価額の5%)により計算することは可能でしょうか。
なお、平成10年時点のこの土地の更地価格(時価)は1億円であり、この地域の通常の借地権割合(60%)は平成10年から現在まで変わっていません。

【回答】

1.底地を取得した後、土地を譲渡した場合等の譲渡所得に係る取得費

借地権等を有する者が、当該借地権等に係る底地を取得した後に当該土地を譲渡した場合には、その土地のうち取得した底地に相当する部分(以下「旧底地部分」)及びその他の部分(以下「旧借地権部分」を、それぞれ別個に譲渡したものとして取扱われます(所得税基本通達33−11の3)。
そうすると、それぞれの譲渡所得の金額の計算上控除する旧底地部分の取得費と旧借地権部分に係る取得費を明らかにする必要があります。それは、原則、それぞれ次に掲げる算式により計算した金額とされます(所得税基本通達38-4の3)。

(1)旧底地部分に係る取得費
(算式)底地の取得のために要した金額×当該土地のうち譲渡した部分の面積÷当該土地の面積

(2)旧借地権部分に係る取得費
(算式)旧借地権等の取得に要した金額×当該土地のうち譲渡した部分の面積÷当該土地の面積

2.底地を取得後に土地を譲渡した場合における、概算取得費の考え方

ご質問の場合、所得税基本通達33−11の3や38-4の3の取扱いにより、収入金額の区分が必要ですが、このいずれの譲渡も、分離課税となる長期譲渡所得として一括(通算)されるので、その意味では収入金額を区分する実益はありません。あとは、借地権の取得費が不明であるところが問題ですから、それぞれの取得費をどう算定・決定したらよいかということになります。
この場合、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地を譲渡した場合における取得費については、その取得に要した金額等がその譲渡に係る収入金額の5%相当額より多いときを除き、その収入金額の5%相当額をもって土地の取得費とすることができます(租税特別措置法31条の4)が、昭和28年1月1日以後に取得した土地や借地権の取得費について、取得に要した金額等が不明なときも同様に、譲渡に係る収入金額の5%相当額とすることができます(租税特別措置法通達31の4-1)。
以上により、ご質問の取得費は、お考えの通り、①旧底地部分は、底地の取得に際して支払った対価の額(実額)をその取得費とし、②旧借地権部分は概算取得費(旧借地権部分の譲渡価額の5%)を適用することができると思われます(参考:大蔵財務協会「平成26年版税務相談事例集」P67)。

3.ご質問の場合の取得費の計算方法

(1)旧底地部分の取得費...実額の採用
実際の取得費が4,000万円で、概算取得費160万円(8,000万円×4,000万円÷1億円×5%)よりも大きいため、取得費は4,000万円となります。

(2)旧借地権部分の取得費...概算取得費による計算
概算取得費により借地権部分の取得費を算定するためには、譲渡対価のうち旧借地権部分の対価を区分する必要があります。その区分計算は、譲渡対価に、譲渡時点のこの地域の更地価額に対する借地権の割合を乗ずる方法が適当と思われます。ご質問の場合、旧底地部分を買った平成10年当時の借地権の割合は60%{=(1億円-底地の価額4,000万円)÷1億円}で、譲渡した時点でも変わっていないことから、旧借地権部分の譲渡対価は8,000万円の60%分の4,800万円とするのが適当です。これに5%を乗じた240万円を、旧借地権部分の取得費とすることができます。 

(3)長期譲渡所得の金額の計算上控除する取得費
(1)+(2)=4,240万円となります。

[ 山崎 信義 ]

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