
2012.02.20
国税庁は平成24年度税制改正論議に向け、所得税の計算上、売却損の損益通算ができない「生活に通常必要でない資産」に関する規定をはっきりさせ、ゴルフ会員権などの扱いを別荘などの不動産と不公平のないようにする意見を財務当局に具申していたことが分かりました。国税庁の「平成24年度税制改正意見」から分かりました。
これは、これまでの税制改正大綱で公社債の分離課税化が検討課題になっていることに関連して国税庁が提案したものです。
具体的には、総合譲渡の範疇に入る資産を分離課税とした上、損益通算の対象から除くことや、所得税の計算上損益通産の対象にならない「生活に通常必要でない資産」のうち、「主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で保有する不動産」にとされている所得税法施行令178条1項2号の規定に「同目的で保有するその他の資産」を加えるというものです。今回の「意見」はゴルフ会員権類似の資産も含む方向となっており、従来に比べ広い視点での意見となっています。
ゴルフ会員権については、国税庁は以前から「税制改正意見」で損益通算の廃止を具申してきました。昨年度の税制改正意見では「ゴルフ会員権」そのものを「生活に通常必要でない資産」に列挙することを提案していました。平成24年度税制改正大綱では、まだ公社債課税の見直しが 宿題になっていることもあり、今後の論議の行方が注目されます。
(遠藤純一)
2012.02.06
特定口座で保管していた上場株式が、上場廃止となり、破産などで価値喪失した場合に、一定の条件のもと、その取得価額を譲渡損失の金額とみ
なす特例の適用件数が急速に増加していることが分かりました。
特例の対象は、特定口座で保管していた日本国内の上場会社の株式が、上場廃止となった日以降、一定の特定管理株式や特定保有株式となったものです。特例が適用できるのは、その株式の発行会社に清算結了などの所定の事実が生じた場合とされています。特例は税務上その株式の取得価額を譲渡損失の金額とみなすというものです(租税特別措置法37条の10の2)。この特例を適用すれば、価値がなくなった株式の損失は、同じ年の他の株式などの譲渡益と相殺できます。相殺できない損失は、翌年以降に繰り越すことはできません。
国税庁の平成21事務年度までの「資産税事務処理状況表」によると適用件数は次の通り増加しています。
平成17事務年度 329
平成18事務年度 485
平成19事務年度 449
平成20事務年度 1,527
平成21事務年度 3,826
※事務年度とは、7月1日から翌年6月30日までの1年間のこと。
(遠藤純一)
2012.01.16
国税庁は平成24年度税制改正大綱の取りまとめ論議に対し、相続税の課税漏れ防止を強化する相続税版の使途不明金課税ともいうべき案を具申していたことが分かりました。これは「平成24年度税制改正意見」に記載されたことから分かったものです。
具体的には、相続開始前の一定期間内に、被相続人の財産を換金したり、被相続人が債務を負担したりして、使途が不明な資金が一定額以上になる場合には、使途不明金を相続人が相続したと推定し、課税価格に算入するするという案です。制度の適用に当たっては、事前に相続人に対し文書で使途の解明を求める手続きを置くことも、案に盛り込んでいます。
国税庁によると、こうした使途不明の相続財産の推定による課税は、お隣の国、韓国に例があるということです。韓国の制度について国税庁が調べ
たところでは、相続開始前1年以内に2億ウォン、相続開始前2年以内に5億ウォン以上の政令で定める使途不明金がある場合、相続財産として推定し課税する仕組みです。
税制抜本改革では、平成23年度の税制改正大綱で実現できなかった相続税の増税を平成27年から行うことを謳っており、資産課税は強化路線にあるところです。国税庁は、消費税増税の表裏である一連の資産税強化に合わせて、適正公平な課税の実現を目指し、相続税版使途不明金課税を打ち出したものと見られます。ただ、平成24年度税制大綱や税制抜本改革には盛り込まれなかったことから、今後の税制改正の動向が注目されそうです。
(遠藤純一)
2012.01.10
自分が住んでいる住宅を売って、新たな生活スタイルに適した住宅に住み替えることを支援する税制としておなじみの「特定の居住用資産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」(いわゆるマイホーム買換え特例)は、最近、適用件数が減少しているようです。
国税庁の資料によると、同特例の適用件数は次の通りです。
平成15事務年度・・・1,287件
平成16事務年度・・・1,086件
平成17事務年度・・・993件
平成18事務年度・・・1,117件
平成19事務年度・・・1,244件
平成20事務年度・・・910件
平成21事務年度・・・501件
※事務年度とは7月1日から翌年6月30日までの期間
ご覧のように1,000件をはさんで増減を繰り替えしてきたところですが、直近の平成21事務年度では501件と前事務年度を大幅に下回っています。平成19年度税制改正では家屋の床面積要件の緩和、3年間の適用期間延長が行われましたが、このような結果になっています。平成22年度税制改正では、譲渡する住宅価格について2億円の上限が設けられ、さらに平成24年度税制改正大綱ではその上限価格を1.5億円に引き下げる案が示されています。含み益が大きく、かつ価格が高い都心立地などの住宅の買換えでは、この特例の適用が難しくなる方向といえます。今後の住宅売却の局面では3,000万円特別控除などを効果的に利用することを考える人が増えそうな状況です。
(遠藤純一)
2011.12.16
相続財産を申告期限後3年以内に譲渡した場合には、譲渡所得の計算上、一部相続税額を取得費に含めて計算する「相続税を取得費に加算する特例」を利用して、相続した有価証券を譲渡する件数の割合がここ数年11%台になっています。
国税庁の資料によると、有価証券を譲渡して「相続税を取得費に加算する特例」を適用した件数は、平成16年以降、1千件台をキープ。平成19年にはここ5年間で最大の1780件になっていました。その後、平成20年には1340件、直近の平成21年には1219件となっています。
一方、不動産を譲渡してこの特例を適用した件数は、およそ1万件台をキープしてきましたたが、ここへきて減少。直近の平成21年に1万件の大台を割り込む9546件まで減少しています。
この結果、この特例の適用件数全体にたいして、有価証券を譲渡して「相続税を取得費に加算する特例」を適用する件数の割合が、相対的に
上昇。現在11.3%余りとなっている状況です。相続財産にしめる不動産の割合が相対的に低下していることも影響しているのでしょうか。
(遠藤純一)