TACTニュース

No.474 土地の賃貸借取引と法人税法の取扱い

2012.02.06

1.土地の賃貸借取引と権利金

法人が貸し手になっている土地の賃貸借取引には、法人税法の規定が適用されます。法人が借地権の設定により、第三者である借り手に土地を使用させた場合、権利金を収受する取引上の慣行がある地域であれば権利金を収受するのが通常です(普通借地権の場合。以下、普通借地権を前提に述べます。)。しかしながら、借り手が利害の対立しない同族関係者等であれば、権利金の収受がなされないということも多く行われています。

2.権利金の認定課税

法人税法では、同族関係者間等で経済合理性のない条件・価額で取引が行われた場合には、第三者間取引で経済的合理性に基づき成立するはずの条件・価額で行われたものとして引き直されます。すなわち、同族関係者間等で借地権を設定する際に、権利金の収受が行われない場合は、第三者間取引と同様に通常の権利金の額の収受が行われた後、同額の現金が、貸し手から借り手に返戻(贈与)されたものとみなされます(法法22条2項、37条)。仮に収受されるべき権利金の額を100とした時、両者に以下の取引が認定されます。

(借り手に認定される取引)
借地権100/受贈益(又は給与所得等)100
借り手が、法人であれば受贈益、貸し手の法人の役員等であれば給与所得等の収入が認定されます。

(貸し手に認定される取引)
寄附金(又は役員賞与等)100/権利金収入100
この「権利金の認定課税」を回避するには次の2つの方法があります。

(1)相当の地代方式

権利金の収受が行われていない場合であっても、相当の地代の収受が行われていれば、権利金の認定課税は行われません。相当の地代は土地の更地価額の概ね6%程度とされ(法基通13-1-2)、権利金の収受が行われた場合に通常収受される地代よりも高い地代になります。借り手は権利金を支払わない代わりに、権利金を支払った上で月々支払う地代よりも高めの地代を貸し手に支払うことも、正常な取引条件による賃貸借取引と認められるという考え方です(法令137条)。

(2)無償返還の届出書方式

権利金の授受が行われず、かつ、相当の地代の授受がなされていなかったとしても、賃貸借契約書において借り手が土地を無償で返還することを定め、かつその旨を貸し手と借り手との連名により所轄税務署長に「無償返還の届出書」として提出した場合は、権利金の認定課税はされません(法基通13-1-7)。しかし、相当の地代とそれに満たない地代との差額につき、地代の認定課税がなされます。つまり相当の地代と実際に収受されている地代との差額について、一旦支払が行われ、その後、同額の現金が、貸し手から借り手に贈与されたものとみなされます(法基通13-1-7)。仮に相当の地代と実際の地代との差額が40であるとすると、両者にそれぞれ以下の取引が認定されます。

(借り手に認定される取引)
地代(又は家事費)40/受贈益(又は給与所得等)40

(貸し手に認定される取引)
寄附金(又は役員賞与等)40/地代収入40
借り手が、法人であれば損益が相殺されて課税は生じませんが、貸し手の法人の役員等であれば給与所得等の認定がされるでしょう。また貸し手である法人には地代収入と寄附金の支出等が認定されます。

3.個人が貸し手である場合の考え方

貸し手が個人であったとしても、借り手が法人であれば法人税の借地権通達の規定が適用され、基本的に同様の考え方になります。異なる点は「地代の認定課税」についてです。個人の不動産所得には、地代収入を契約上収受すべき金額にとらわれずに認定する制度が所得税法に存在しないため(所得税法36条)、所得税法157条の同族会社の行為計算否認規定の適用がなされる場合を除き、相当の地代と実際の地代の差額について収入を認定される恐れはありません。

借地権の取扱いは複雑であるため、正しい理解が必須となります。

(金井 義家)


このページのトップへ